京都工芸繊維大学

やわらかさデザイン研究室

研究テーマ

コンセプト:素材の「やわらかさ」を活かすテクノロジーを追求

人を幸せにする「やわらかさ」の追求

人は、心地よい肌触りによって、「幸せ」を感じることができます。

  • そこで、究極の幸せを実現できる素材の開発へ貢献を目指して、天然素材から樹脂、食品、金属からヒトの身体に至るまで、さまざまなモノの「やわらかさ」を数値データ化する計測システムのテクノロジーを研究・開発しています。

「やわらかさ」をデザインするテクノロジーの研究

  • 理論的に「『やわらかさ』とは何か?」を定義した上で、コンピューターによる数値シミュレーションも駆使しながら、さまざまなモノに相応しい「やわらかさ」を実現するためのテクノロジーを研究・開発しています。

  • とくに人に身近なモノは、その多くがやわらかい素材で出来ているため、そこで観られる変形は現象の大きさから計測と理論的な解析が難しいテーマでした。そこで、大きな変形でも客観性を保ちながら現象を評価できる計測の理論およびシステムを構築し、この研究テーマの解決に取り組んでいます

「やわらかさ」+「力強さ」=『次世代ソフトアクチュエーター』

  • モノの「やわらかさ」の研究をベースとして、次世代に発展・普及が見込まれるソフトアクチュエーターの研究・開発を行っています。

    「やわらかさ」は、モノへ外力を加えたときに生じる変形の大小で評価されますが、これが無いハードなシステムがモノを動かすアクチュエーターでは理想とされていました。しかし現在では、ヒトの身近に駆動システムが多くなってきたため、ソフトで安全性が高いアクチュエーターの実用化が望まれています。

    そこで、いろいろな生活のシーンで既に使われているソフトな超弾性合金を使って、やわらかくて強力なアクチュエーターを実現する原理および制御システムについて研究しています。

『やわらかさ』とは何か?

「やわらかい」の定義(広辞苑,第六版, 2008年1月11日, pp.2849-2850)

【柔らかい・軟らかい】 [形](文)やはらか・し(ク)

①物の性質・状態が堅くない。しなやかである。ふっくらしている。

◇「柔」は「剛」の、また、「軟」は「硬」の、それぞれの対語の意味で使われることが多い。

「柔」は、力を加えて変形してても元に戻る場合、「軟」は、力を加えると変形しやすく元に戻らない場合によく使う。

以上から、工学的に「柔さ」は弾性、「軟さ」は塑性と等価な語感があることになります。(下図)

※「剛い」は死語になりつつあるようです。(著者注,2015/8/1)

「やわらかさ」を物理学的に定義する構成式と『弾性』

  • どれだけモノが硬いかを追求における評価指標として「硬さ」が一般に用いられるのに対して、より変形しやすいモノを追い求めるプロセスでは「やわさ(柔さ/軟さ)」を用いることが評価において効果的である。この変形しやすさを評価する指標には、さまざまな定義があるものの、もっとも良く知られたものに『弾性』がある。

    この弾性についての物理学/力学的な法則の1であるのフックの法則(Hooke's law)は、小学校の理科でも学習するほど良く知られているが、モノの変形の大きさxと加えられた荷重Fとの間に比例関係があるとするものである。このとき、比例係数kはばね定数(spring constant)と呼ばれます(左図右)。

    このフックの法則は、部材に加えられる荷重Fと生じる変形xとを論じるときに有益ですが、荷重Fと変形xを部材内の面積あたりの荷重である応力σと変形の大きさを比率で表したひずみεで表すことによっては、部材の大きさによって変化しない「素材」そのものの特性を調べることができます。

    このときの比例係数Eは、ヤング率(Young's modulus)と呼ばれる物理学では最も基本的な物理量/物性値の1つです。また、ここでの関係式σ= Eεは構成式(constitutive equation)と呼ばれます。

あらゆる素材のやわらかさを比較する物性値「ヤング率」の活用

最も基本的な物理量/物性値の1つであるヤング率は、固体・液体・気体という3つに大別できる物質(モノ)の状態(三態)の中でも固体(solid)において定義できるものですが、その大きさについては引張り試験や圧縮試験、押込み試験など多様な試験方法よって計測ことができます(下図)。

ここで、ヤング率の単位は、荷重F [N] の面積あたり大きさである応力σ[Pa](Pa = N/m2)と変形量[m]を比率で表したひずみε[-](=m/m、無次元量)の比例係数を表すことから、Paで表現されることとなります。

『やわらかさをデザイン』するテクノロジー

なぜ「かたさ」ではなく「やわさ」か?:人のためのテクノロジー

素材の変形しやすさを表現する際に、人は自分が持つ基準よりも変形し難いモノを「硬い」と表現し、変形し易いモノを「柔い/軟い」と表すことが多いものです。

特に、人に心地良さを与えることができるものが多いことから、素材の「やわらかさ」を適切にコントロールできるテクノロジーの研究開発は、身に着けるモノの高品質化を実現するために無くてはならないものです。

やわらかさデザイン:先端テクノロジーを駆使した取組み

その変形の大きさから従来は困難であった「やわらかさ」の解析が、コンピューターテクノロジーの発達と普及によって、かつてよりも正確かつ効率的にできるようになってきました。

また「やわさ」の計測テクノロジーも充実してきたことから、「人を幸せにする『やわらかさ』」が如何なるものかについて、これを理論的に解析できる時代へと至っています。

このように、「やわらかさデザイン」は、いまQOL(quality of life)を向上させる重要なキーテクノロジーの1つとして確立が求められている技術です。

TOP